【スズキ・セルボ】
スズキと言えば軽自動車のイメージで、狭い日本の交通事情にマッチした4輪車をいくつも輩出してきたメーカーです。軽自動車の魅力といえば維持費の安さ・乗り出しの手軽さ・小回りが効く・低燃費などがベースとなっており、もはや日本人の生活に完全に溶け込んでいるカテゴリーでもあります。
特に現代ではそれだけでは留まらず、アウトドア要素や普通車並みの積載量を誇るトールワゴン、オープンカーなどの様々な付加価値を与えてどのメーカーも凌ぎを削っている様にも感じます。それほど軽自動車というのはホットな市場で、今後も伸びていくものだとも思います。
もちろんスズキは軽自動車ばかりではなく普通車のクオリティも高いものが多く、昨今のラインナップはかなり充実してきています。エスクードなんかはかなり高性能なSUVですが、コストパフォーマンスがかなり良いので定評がありますね。
と言ってもやはりスズキの強みは軽自動車。昔から小型自動車を作り続けた技術は伊達ではありません。
今回はそんなスズキの旧車の中でも少し毛色が違った車をご紹介いたします。その車の名は『セルボ』です。この車はスズキ車の中でも知る人ぞ知る名車で、初登場の1977年〜2011年の間にモデルチェンジを繰り返しながら生き長らえてきました。
結果から言うと初代セルボの魅力はそのスポーティーな見た目と、3発2ストロークエンジンと言う尖ったスペックを持っている事です。
そんなセルボの始祖である『初代セルボ』についてたっぷり語っていきたいと思います。
目次
【主な仕様】
初代セルボの主な仕様です。登場したのは1977年で、1982年の5年間の間生産されたモデルです。グレードはCX-G・CX-L・CXのバリエーションがありました。それぞれの違いはブレーキシステムやホイールの種類、内装の違いなどがありました。CXは主に廉価版でいわゆるベースグレード的な位置づけです。
実は先代に360ccフロンテクーペがいましたが、軽自動車新規格に合わせて550ccクラスとしてセルボが誕生しました。フロンテもかなり良い車だったそうなので、『名車の転生』とも言えますね。
・ T5A型 直列3気筒2ストロークエンジン
・排気量539cc
・燃料供給方式キャブレター
・全長3190mm
・全幅1395mm
・全高1210mm
・ホイールベース2030mm
・車体重量550kg
・最高出力28ps /5000rpm
・最大トルク5.3kgf•m /3000rpm
550ccクラスで2ドアのファストバックタイプのクーペボディですが、乗車定員は4名と意外に実用的。もちろんゆったりでは座れなさそうですが、あると嬉しい後部座席がしっかりあります。
名前である『セルボ』はイタリア語で『牝鹿』を意味します。綴りも全く同じ『CERVO』となっていますが本来のイタリア語の発音は『チェルボ』だそうです。可愛らしい名前ですが、結構面白いスペックの車なのでじっくり見ていきましょう。
【3発2ストロークエンジン】
セルボのエンジンは3気筒2ストロークエンジンというスズキのバイクを彷彿させるエンジンを搭載しています。一般的に普及している4ストロークに対し2ストロークエンジンは『吸気・圧縮』と『燃焼・排気・掃気』の2つの工程をエンジン1回転で行う構造の為、4ストロークよりも高いトルク性能と、エンジンの小型化などのメリットがあります。
今でこそ排ガス規制で無くなったエンジン構造ですが、そのパワフルさと独特のフィーリングに魅せられたファンは数多くいます。私も2ストエンジンが好きで、特にあの独特の混合油が燃焼する匂いが嗅ぎたくて2ストバイクを見つけては後ろにぴったりくっついて(もちろん車間距離は取った上で)走っていたものです。側からみればかなりヤバイ奴ですが、分かる人は多いのではないでしょうか。
話は戻って、セルボの駆動方式はRR(リアエンジン・リアドライブ)とかなり走りを意識した仕様になっています。可愛い名前とは裏腹なその性格は、まさに『牝鹿の皮を被った狼』とも言えます。
ジムニーの2ストには以前乗せていただいた事がありますが、初代セルボの乗り味はどんなものか気になりますね。やっぱりフィーリングはバイクに似ているものがあるのでしょうか。
【堅牢な足回り】
続いて初代セルボの足回りについて見ていきますが、上位モデルのCX-Gはスチール製ホイールを装着しており、制動装置もフロントにディスクブレーキを採用しています。パワーのある2ストロークエンジンに対し安心の足回りとなっていました。(但しその他のグレードはドラムブレーキ)
またサスペンションのストロークも比較的短かったそうで、硬い走りだったと思われます。サスペンションが硬いと乗り心地に影響しますが、カーブ時のロールが少ないなどのメリットもありますので、走りを楽しむ事に関しては結構良い点だと私は感じます。
【スポーティーなスタイリング】
まずはその外観について解説していきます。先程も少し触れた通り、全体的なデザインとしてはファストバッククーペスタイルのスポーティーなボディをしています。
フロントマスクはカッと見開いた丸目ヘッドライトが特徴的です。角ばったボンネット部分は小型ながら存在感抜群で、イカツイ表情を演出。
外見的な高級感はあまり見受けられず、まさに大衆車と言った感じですがフロントバンパーはしっかりメッキ加工のものが採用されています。逆にシンプルな見た目に強烈なアクセントの様にも感じます。
リア部分は大きく寝かせたハッチバックとキュッとしまったテールデザインが印象的です。軽自動車にしてはボンネットは長く低めのボディなので、手軽な大衆車というよりスペシャリティーカー然とした佇まいです。
全体的にコンパクトでスポーティーな見た目なので、まるでラリーカーの様にも見えます。
【攻め姿勢にさせる内装】
セルボは内装もスポーティーさが溢れています。基本的に樹脂パーツが多く、クラシカルというよりモダンな感じがします。
メーターのデザインはCX-Gは6連メーターを採用するなどして上位モデルらしい豪華な仕上がり。また、セルボはRRの為ボンネットの部分に幾分かのスペースがあり、ドライバーの足を深く入れるような構造となっています。この事によってドライビングポジションはかなり低姿勢になり、まさにフォーミュラマシンを運転しているかのような感覚になったとか。
見た目だけではなく内装の拘りも感じられるセルボ。軽自動車ながら侮れません。昨今のスポーツ軽自動車の先駆けとなる様な、贅沢な仕様となっています。
【意外なターゲット層】
先代のフロンテ・クーペはかなり硬派なスポーツモデルですが、セルボの主なターゲット層は意外にも『女性』です。散々スペシャリティーカーなどと持て囃しましたが、いわゆる『パーソナルクーペ』という位置づけで、大衆に寄り添ったコンセプトの車とされています。
この女性をターゲットとした点を考えると『セルボ(牝鹿)』という可愛らしいネーミングは頷けますね。
ちなみに初代の販売台数は8万4800台と大ヒットもせず大コケもせずまずまずと言ったところ。時代が時代なだけにあまり2サイクルエンジンが受け入れられなかった事もあるかも知れません。
初代セルボのテレビCMもかなり女性を意識した様な内容で、真っ赤なセルボから降りてきた水着の女性がハイビスカスがいっぱいに撒かれたプールにダイブすると言う内容で『セルボの夏』『気分は晴れのち晴れ』と柔らかい口調の女性の声でナレーションが入った後に、『愛らしく小粋に、スズキのセルボ』とトドメのキャッチコピーが。このテレビCMでもバシバシに女性を多ーゲットにしていることが分かりますね。
それにしても女性をターゲットにするには些かスペックが尖りすぎている気がしますが、きちんとその層には響いたのでしょうか。逆にこう言ったコンセプトの車に対しても車としての拘りをぶつけるあたりが『変態スズキ』と呼ばれる所以となった一部かも知れません。
平成の時代になると5代目となるセルボは流線型で切れ長のヘッドライトが特徴的なスタイリッシュなデザインになり復活しましたが、5代目セルボのターゲット層は若い男性という方向転換を見せました。こちらは結構売れた様ですが、販売台数までは分かりませんでした。
【初代セルボの中古相場は?】
初代セルボの当時の販売価格や、現代の中古相場を調べてみましたが、なかなか情報が少なく結局は両方とも分かりませんでした。
中古相場に至っては、初代セルボ自体が中古市場にほぼ出回っていない様で私が探した限りでは今のところゼロ台です。
とんでもないレア車になっていますね。果たして現役で走っている個体はいるのでしょうか。あったとしたら、どれだけ値段が付くかが楽しみですね。500万円はオーバーシそうな感じもします。
もしオーナーの方がいらっしゃったらじっくり実車をみさせて頂きたいです。
【セルボは車の面白さを気付かせてくれる】
車というマシンの面白さは人それぞれですが、やはり大の車好きならば『走る楽しさ』『操る楽しさ』を味わいたいと思うでしょう。全員がそうとは言いませんが、少なくとも私はそうです。
セルボは小型ながらその二つを兼ね備えているマシンと言えます。しかも3発2ストという尖りに尖ったエンジンは時にヘソを曲げたり、牙を向いたりと一筋縄に行かない様な感じがまさに車の楽しさ、旧車の楽しさを十二分に味合わさせてくれます。
そんな車の本来と言うか、昔ながらの素性を存分に感じることができる初代セルボは、スズキにとっても名車の一つと言えるのではないでしょうか。
今となっては現存する個体がだいぶ減っている様ですが、是非とも一度だけでも実車に触れて、その『化けの皮』を剥いでみたいですね。
以上スズキ『初代セルボ』のご紹介でした。
【旧車パーツのリクロームメッキ出来ます】
NAKARAIメッキで加工した旧車パーツ参考事例を掲載させていただきます。
ケンメリバンパー
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再メッキ前 |
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再メッキ後 |
ダットサン フェアレディ(SR311型)リヤバンパー
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再メッキ前 | メッキ剥離後 |
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板金修理後 | 再メッキ後 |
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再メッキ後バンパー |
旧車パーツのメッキ手入れ
クロムメッキパーツの多い旧車パーツの手入れにおすすめケミカル「メッキング&サビトリキング」についてご紹介させて頂きます。
クロムメッキには最大の弱点が!?
クロムメッキには目にみえない無数のミクロン単位の穴があいており、そこから水や埃がはいり、クロムメッキが錆びるよりも前に、下地のメッキが錆びてきてしまいます。
ウオータースポットの発生→点錆び→メッキがめくれるくらいの錆びになってしまいます。
錆びてきていない初期の段階で、この穴を埋める事を強くお勧めいたします。
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