プリンス日産グロリアA30型、通称『タテグロ』
目次
【平成のVIPカーブーム】
「VIPカー」この言葉を聞くと血湧き肉躍る車好きは多いでしょう。1990〜2000年代は空前のVIPカーブームで、高級セダンを乗り回す事が一種のステータスとされた時代でした。VIPカーと言っても本当にVIPが乗るわけでもなく『まるでVIPでも乗せているかの様なラグジュアリーな車』全般を指します。一種のカテゴリーの様なモノで、特に厳しい定義は有りませんが強いて言うなら『3ナンバー、セダン』ぐらいでしょうか。
そのVIPカーブームの根幹を支えた、つまり最も人気があったのがトヨタと日産の2大メーカー。ネームバリューは元より、長年に渡って大衆車としてセダンを作り続けてきた2社の車種と球数の豊富さは伊達では有りませんでした。それこそ右を向けばトヨタ、左を向けば日産といった感じです。もちろん他のメーカーもいましたが、圧倒的にこの2社が多かった事を覚えています。
その中でも私が好みのデザインだったVIPカーが日産『グロリア』です。Y33型と呼ばれるモデルでしたがカッと見開いた4つ目のヘッドライトで、他のVIPカーには無い威圧的な顔面が特徴です。グロリアの兄弟車でセドリックという車も有り、車好きの間では『セドグロ』とセットで呼ぶ事が有りました。両車とも見た目こそは似ているものの生い立ちは異なり、セドリックも素敵な車ですが今回はグロリアのみにスポットライトを当てていきます。
このグロリアの歴史は深く、知れば知るほど魅力的な車です。その中でも最もラグジュアリーな『ロイヤルルック』と呼ばれたグロリアA30型のご紹介をします。
元々グロリアはプリンス自動車が1959年に発売した当時から高級志向の4輪車で、今回の主役であるグロリアA30型はプリンス自動車と日産自動車が合併した翌年1967年にモデルチェンジした3代目となります。この3代目であるグロリアA30型が『ロイヤルルック』と呼ばれる所以となったのが、ほぼ同時期に製造されていた『ロイヤルプリンス』と呼ばれるリムジン型の高級車に似ていた事からその呼び名が付きました。
本物のVIPカーのデザインを踏襲した様なグロリアもまた、本物のVIPカーと呼ばれるに相応しい車では無いでしょうか。それではじっくりとその魅力について語っていきます。
【主なスペック】
3代目グロリアA30型が販売期間は1967年4月〜1971年2月。セダンタイプに加え、バンタイプも有り多方面に活躍する意外と器用な車でした。今回ピックアップするのはセダンタイプのスーパーデラックスです。
・G7型エンジン(直列6気筒SOHC2.0Lエンジン)
・排気量1988cc
・燃料供給方式キャブレター
・全長4690mm
・全幅1695mm
・全高1445mm
・車体重量1295kg
・ホイールベース2690mm
・最高出力105ps /5200rpm
・最大トルク16.0kgf•m /3600rpm
搭載されている6気筒G7型エンジンはプリンス側が手掛けたモノで、車検証の名前も『プリンス』と記されていたそうです。その後のマイナーチェンジの流れで、スカイラインやフェアレディなどにも載せられた当時の日産を代表するL20型エンジンへ変更されました。それを期に完全にプリンス要素は淘汰され、日産色の強い『グロリア』へと変貌していきます。この変化を悲しむファンもいたそうです。
実はL20型エンジンが最初に搭載されたのは1965年セドリック130型で、ここからすでに『セドグロ』の繋がりがなんとなく伝わる感じがします。ちなみに『グロリア』とはラテン語で『栄光』を意味します。名前からして高貴な雰囲気がしますね。
【見た目から付けられた愛称はタテグロ】
3代目グロリアA30型のデザインの特徴を言えば、そのヘッドライトのデザインです。フロントマスクの両端にそれぞれ縦に配された2連ライトの特徴的な見た目から、ファンの間で『タテグロ』と呼ばれるようになりました。
「いや、もっと何か他にあるだろ!」と思わず言ってしまいたくなる愛称ですが、私はこの直感的で的を得た当時の『ロックンロールなネーミングセンス』が大好きです。最初にタテグロって言った人は本当にセンスがあると思います。シンプルだけどしっくりくる、現代には無い感性ですね。
って思って更に調べてみたら初代セドリックも同じ様なタテ目で、『タテセド』って呼ばれてるみたいですね。どちらが先にそう呼ばれたのか分かりませんが(発売が先でもあだ名は後から付いたりもするので)語呂が良いのはタテグロですね。
【まるでアメ車の様な風格】
プリンス自動車の高級リムジン、プリンスロイヤルに類似している事から『ロイヤルルック』とは呼ばれたタテグロ。しかし実際は似て非なるもの。
薄く平べったい車体にドンとキャビンを乗っけた様な見た目は、それそこ60年代アメ車のローライダーカスタムが似合うデザインで、フロントノーズとトランク部分の余裕のあるロングで全体的に角張ったボディは、威圧感というより厳格ささえ感じる迫力です。フロント先端にキラッと光るオーナメントも洒落ています。
車体の全長に関しては、4690mmと案外現実的な長さに感じますが、現行車の3ナンバークラスと同等なので当時としては、大きい部類に入るかと思われます。
タテグロが放つオーラは日本車とは一線を画したアメ車の『それ』と同じで、特にバンタイプとなるとポンティアックの1966ボンネビルステーションワゴンにそっくりなので、メタリックカラーにペイントしたら本当にアメ車にしか見えないですね。
フロントグリルの造形も秀逸で、まるでハーモニカの様な目の細かいグリルがボンネットに上からギュッと挟まれています。その美しさとは裏腹に、エッジの効いたパターンのグリルはまるで獰猛な獣の歯の様でも有ります。『ロイヤルルック』と『アメ車ルック』、『気品さ』と『獰猛さ』、この両面性がタテグロだけが持ち得る魅力の一つなのかも知れません。
【細部に散りばめられた高級感】
タテグロの魅力はこれだけでは無く、細部のディティールに関しても抜かり有りません。その無骨なボディに這う様にあしらわれたメッキパーツの多さに目を奪われます。
まずはフロント周りから見てみると、タテグロの代名詞でもある縦型2灯ヘッドライトの縁、威嚇するかの様に突き出たフロントバンパー、グリルを上下で分断したかの様に横一線に引かれたライン全てがメッキ加工が施されて有ります。
視線をフロントから側面へ移していくと至極当然かの様に、何の違和感もなくグリルを上下で分断していた一閃のシルバーメッキのラインがヘッドライト、フロントフェンダー、フロントドア、リアドア、リアフェンダー、そしてテールへと一切の途切れもなく続いています。
真横から見ると分かる「この線から上下に切り離せるんですか?」って聞きたくなる程の綺麗な『一筆書き』は、指でツーッとなぞりながた愛でたくなるポイントでは無いでしょうか。それとも私だけが興奮するポイントでしょうか。とにかくこの大胆なデザインは、タテグロの高級感をさらに盛り上げてくれる要素の一つである事は間違い無いでしょう。
その美しい一閃が導く先にあるのがリア部分。フロント同様にテールランプなどのリアに集中した保安灯をシルバーメッキのフレームで包み込み、やがてリアバンパーへと到達します。それだけに留まらず、各ウインドウ部分もメッキモールで縁取るというまさに高級車仕様。これこそがまさにVIPカーでしょう。
タテグロを見ていると、専属ドライバーが豪邸の前でデッカイ羽毛のファサファサしたヤツで、ボディを撫でながらVIPを待っている絵が思い浮かびます。あのファサファサしたヤツは何の羽毛なんでしょうか。
【タテグロの内装】
タテグロの内装もかなりアメ車チックで、運転席を開けると眼下に広がるのはまるで高級ソファーの様な縦縞が基調のベンチシート、そこに腰掛けると二点で支えた細くて大きいステアリング。ダッシュボードは運転席から助手席までズドンと横一直線に伸び、ステアリングの間から覗くスピードメーターの数字はまるで、高級腕時計の様な書体。
これだけでもかなりアメリカンな感じがしますが、私が一気に入ったのがATコラムシフトです。人によってはコラムシフトは結構好き好きですが、私はあの「こんなデカイ車をこんな細いコラムシフトでコントロールしてる!!」って言う独特の快感を得られる人種なので、かなり大好きです。これ、共感してくれる人いますかね?
【タテグロの中古相場は?】
今回ピックアップしたスーパーデラックスモデルのタテグロの当時販売価格は残念ながら分かりませんでした。その上、中古市場にも球数が非常に少なく、あっても時価というスッキリしない結果に。しかしこれは裏を返せば『ユーザーが全く手放さない証拠』なのでは無いでしょうか。
旧車としては中古市場に出回らない事ほど嬉しい事の様に感じます。いや、買い手からすれば球数が多い方が嬉しいですが、『嬉しい悲鳴』と言ったところですね。一概には言えませんがな強いファンがタテグロを愛し続けている証拠でしょう。もしあなたがタテグロの上玉を見つけたら、きっとお家に向けたくなるに違いないと思います。
【本物のVIPカーをその手に】
高級車としての気品さ、アメ車の様な獰猛さ、その両面性を上手く融合させたのが『タテグロ』です。私たちが直面した2000年代のVIPカーブームが何だか可愛く思える本物の『ザ・VIPカー』です。
しかし決して威張ったりせずズンと構えた大物の様な(実際大物なんですけど)オーラは、確実に道ゆく人の目を奪うに違い有りません。艶々のボディとシルバーパーツを輝かせながらのドライブなんて想像しただけでもワクワクしてきませんか?そんな瞬間を具体的に、鮮明にイメージさせてくれるプリンス日産の栄光のカタチこそがこのタテグロでしょう。
以上、プリンス日産グロリアA30型、通称『タテグロ』のご紹介でした。
【旧車パーツのリクロームメッキ】
NAKARAIメッキで加工した旧車パーツ参考事例を掲載させていただきます。
ケンメリバンパー
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再メッキ前 |
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再メッキ後 |
ダットサン フェアレディ(SR311型)リヤバンパー
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再メッキ前 | メッキ剥離後 |
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板金修理後 | 再メッキ後 |
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再メッキ後バンパー |
プリンス日産グロリアA30型のメッキ手入れ
クロムメッキパーツの多いプリンス日産グロリアA30型、通称『タテグロ』の手入れにおすすめケミカル「メッキング&サビトリキング」についてご紹介させて頂きます。
クロムメッキには最大の弱点が!?
クロムメッキには目にみえない無数のミクロン単位の穴があいており、そこから水や埃がはいり、クロムメッキが錆びるよりも前に、下地のメッキが錆びてきてしまいます。
ウオータースポットの発生→点錆び→メッキがめくれるくらいの錆びになってしまいます。
錆びてきていない初期の段階で、この穴を埋める事を強くお勧めいたします。
穴を埋める事で、クロムメッキの穴を埋める事で耐食性が上がます。
クロムメッキ保護剤「メッキング」
クロムメッキ錆落とし剤「サビトリキング」
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(POPデザインは バイク/車/トラック とありますが中身は一緒です)
クロムメッキの事についてもっと知りたい方は、
詳しくはこちら:クロムメッキの全てが解る。