【BMW Rシリーズの誕生】
今回ご紹介するのはBMWの『R60/2型』(以下R60/2)で、オールドタイマーレストア入門マニュアル8 旧車エンジン整備術の記事内に使用されたバイクです。
その前にRシリーズについて少しお話しさせて頂きます。『Rシリーズ』とは言わずもがなBMWを代表するバイクシリーズの総称で、BMWが1923年に初めて製造したバイクです。
最初に作られたのは『R32』と言うバイクで、今でこそBMWのバイクシリーズの代名詞となった『フラットツインエンジン(またはボクサーエンジン)』ですが、実は初代であるR32から既に水平対向2気筒エンジンが採用されたおり、その歴史の深さを揺るぎないアイデンティティを感じます。現代でもRシリーズは生産されているので、初代から通算すると98年の歴史になりますね。
フラットツインエンジン以外の当時のRシリーズの特徴と言えば、自転車の様な大径ホイールに細いタイヤ、ギミックの面白いサスペンションシステム、シャフトドライブが挙げられます。
アメリカを代表するハーレーダビッドソンが『豪快』とするなら、BMWは『緻密』と言ったとこでしょうか。ドイツメーカー特有の繊細さが伝わる作りをしています。
皆さんご存知の通り、BMWはドイツはバイエルン州ミュンヘンに本社を構える自動車・バイクメーカーでもともと航空機のエンジンを製造していたのも有名な話です。
青と白のプロペラの様なエンブレムも『青い空と白い雲』を模したと言うのもすっかり浸透している話です。またこの青と白はバイエルン州の州旗と同じカラーリングでもあります。
R60/2は文字通りR60の後継機で、1960年〜1969年の間製造されていました。1960年代と言えば日本のバイクシーンも大盛り上がりで高性能バイクが軒並みリリースされていた時代ですが、同じ年代に作られたとは思えないほどのビンテージ感です。
以前とあるバイク屋にR60(R40だったかも・・・)が展示されていたので、ちょっと見てみましたが貫禄というか威厳のある雰囲気を醸し出していました。売り物ではなく展示用でしたが。
ショーウインドウ越しでもかなりの存在感を放っていたので、客引きにはこれ以上ない程の効果ですね。実際私も立ち寄りましたし。
それでは今回の主役であるR60/2についてたっぷりご紹介したいと思います。
目次
- 【主な仕様】
- 【威厳のある外観】
- 【緻密に計算されたサスペンションシステム】
- 【フラットツインのジェントルなフィーリング】
- 【メンテナンスフリーなシャフトドライブ】
- 【バイク乗りなら憧れたことがあるサイドカーモデル】 R60と言えばサイドカーモデルが有名ですね。先程も触れたちょっと変わったサスペンションのシステムもサイドカー有りきだと考えると何だか頷けますね。恐らくサイドカーの荷重による垂直の揺れに対応した構造なのでしょう。
- 【R60/2の中古相場は?】 かなり貴重で博物館級のR60/2ですが、私なりに調べてみました。
- 【BMWの技術に浸る】 R60/2はバイクとしての希少価値もかなり高いですが、BMWと言う今では超一流メーカーの技術や伝統を肌で感じることができるのである意味『文化財』的な価値もありそうです。
- レストアに欠かせない再メッキできます
- BMWの『R60/2型』のメッキ手入れ
【主な仕様】
R60/2の主な仕様です。前モデルのR60と比べると最高出力アップなどがされている様です。
・空冷水平対向2気筒 OHVエンジン
・排気量594cc
・燃料供給方式キャブレター
・全長2125mm
・全幅660mm
・全高980mm
・ホイールベース1415mm
・最高出力30ps/5800rpm
・ボアシリンダー72×73mm
・タンク容量17L
なかなか情報が少なく、頑張って集めてみました。見た目がかなり古めかしいですが、スペックを見るとちゃんとバイクですね。当たり前ですが。
【威厳のある外観】
再三いいますが、R60/2の外観は威厳のある見た目で一目見た瞬間にひざまずいて拝みたくなる程です。ビンテージバイクの雰囲気が溢れ出しています。走っている姿は超貴重でしょう。
まずは全身黒く塗られたボディが特徴的でパッと見フレームと他のパーツの境目が分からないほどの徹底的な黒。容量17Lの大きなタンクに貼られたBMWのエンブレムが余計に光って見えます。
ヘッドライトは少し長めの砲弾型で、ブラックのライトケースにレンズ部分はシルバーメッキのヘッドライトリムで飾られています。ちなみにメーターはヘッドライトケースに埋め込まれています。
フェンダーはタイヤを大きく包み込んだ鉄製のフェンダーが装着されています。形状的にはサイクルフェンダーに近いですが、ボディと同じブラック塗装が施され、更にシルバーのモールの装飾までされているちょっと贅沢な仕様です。
フレーム形状もかなり特徴的で、一見リジッドフレームに見えますがきちんとサスペンションションも装着されています。そのフレームとリアフェンダーに沿う様に着けられたシートは厚みがあり、高級感のある仕上がりです。
全体的に、何となく英国車メーカーのAJSポーキュパインを思い出す曲線美です。
【緻密に計算されたサスペンションシステム】
私がRシリーズを『緻密』と表現した理由がこのサスペンションシステムです。
まずフロント部分ですが、一般的なテレスコピックかと思いきやよく見るとリアサスの様なショートタイプのサスペンションが。どんな構造かというと、ステア真下から『く』の字に曲がったリンク式の2本のアーム先端をつなぐ様に先程の短いサスペンションが着けられています。
そしてリアもフロントと同じくらいの長さのサスペンションが装着されています。こちらも面白い着け方がされており、スイングアームの先端から垂直に伸びており、サスペンションカバーの中腹とフレームが連結した構造です。
「もっとシンプルな着け方なかったの?」と聞きたくなるくらい周りくどい装着方法ですが、この面白いギミックこそがRシリーズの魅力でもあります。何というか『発展途上中の技術』を見ている様な感じがしますね。よく考えてあるシステムです。
サスペンション自体もフルカバータイプなので、バネ部分が見えないのもまたデザイン性が良いですね。最初はサスペンションが着いていないと勘違いしそうなくらい、硬い雰囲気があります。
【フラットツインのジェントルなフィーリング】
旧車と言えばエンジンの鼓動感やサウンドが醍醐味の一つですが、R60/2はまた違った良さを魅せてくれます。
大きく横に突き出たエンジンの傍にあるキックスターターで始動すると(しかも左キック)響くのは静かなメカノイズ。ハーレーや国産の旧車の腹に響く様なサウンドを期待している人からすれば少し肩透かしで物足りないかも知れませんが、ジェントルなエンジンサウンドからは静寂性を追求したBMWの技術力を感じます。この音だけでスムーズなライディングがイメージできる程です。
もともと航空機エンジンメーカーだったBMWがバイク事業に転じたきっかけは、第一次世界大戦において敗戦したことによるものです。ベルサイユ条約によって軍事工業に対する規制が強まり遂には製造自体が禁止されることとなりました。
規制後は鉄道関係のニッチ工業で耐え忍んでいくことを余儀なくされ、一時は経営まで危ぶまれる程の危機にも陥りそうになったとか。
しかしエンジンメーカーとしての熱意を燃やし続け、逆風の中で開発されたのが後のRシリーズに搭載されることとなる、水平対向2気筒エンジン(フラットツイン)です。
航空機エンジンのノウハウと全く新しいイノベーションに富んだ、全く新しいこのエンジンは瞬く間に人気を博し、奈落の底からBMWをトップメーカーへと引っ張り上げました。このエンジンはBMWにとって原点で有り、救世主でも有ります。
そんなフラットエンジンのアクセルを吹かせば、大きく伸びたストレートマフラーから吐き出されるのは軽やかでありながら芯のあるサウンド。
見た目とは裏腹にまるで最新機械の様なフィーリングはR60/2の印象をガラリと変えてくれます。「嬉しい裏切り」を見せてくれる粋なバイクです。このサウンドと共にBMWの壮絶な歴史に浸るのも良いですね。
【メンテナンスフリーなシャフトドライブ】
BMWのRシリーズは古くからシャフトドライブを採用しています。チェーンドライブやベルトドライブと違い、エンジンの駆動をギヤシャフトでリアホイールに伝達する構造で、基本的にカバーで覆われているので、粉塵や異物の噛み込みの心配が無く、チェーンの様に弛むこともないので、メンテナンスフリーとなります。
もちろん完全なメンテナンスフリーでは無く、定期的なギヤオイルの交換は必要ですが、頻繁ではないので他の駆動型式よりかなりメンテナンスは楽と言われています。
この時代のシャフトドライブがどの程度の頻度オイル交換が必要かは分かりませんが、メンテナンス面も考慮したBMWは、ユーザーのコスト負担を軽減させようとしてくれたのかも知れません。
見た目だけでは無いメーカーとしての使命を果たす姿勢は流石と言えますね。
【バイク乗りなら憧れたことがあるサイドカーモデル】
R60と言えばサイドカーモデルが有名ですね。先程も触れたちょっと変わったサスペンションのシステムもサイドカー有りきだと考えると何だか頷けますね。恐らくサイドカーの荷重による垂直の揺れに対応した構造なのでしょう。
装着されるサイドカーもR60/2と同じ様なカラーリングと流線型の美しいデザインで、バイク車体との一体感を感じます。もちろん大きめのスクリーンが装着されているので、同乗者は快適そのものでしょう。
R60/2にサイドカーを着けてロングツーリングやキャンプツーリングとか憧れますね。
【R60/2の中古相場は?】
かなり貴重で博物館級のR60/2ですが、私なりに調べてみました。
・・・がもちろん現在の中古市場には出回ってはおらず、本当にそれこそ博物館に行かないと見れないレベルかも知れません。走っている姿が見れたら超ラッキーです。
参考になるか分かりませんが、R50シリーズがサイドカー付きで500万円オーバーだったので、それに近い金額、物によってはそれ以上になるかと思われます。
【BMWの技術に浸る】
R60/2はバイクとしての希少価値もかなり高いですが、BMWと言う今では超一流メーカーの技術や伝統を肌で感じることができるのである意味『文化財』的な価値もありそうです。
これに限ったことでは無いですが、旧車はその時代や背景を投影した鏡の様な存在ですので旧車に乗ると言うことは『タイムスリップ』するのと同じ様な気がします。
ちょっとロマンチストみたいな言い方ですが、R60/2の前ではそんな歯の浮く様な台詞が自然に溢れてしまう様な魅力的なバイクです。
こんなバイクが未来永劫、語り継がれることを願います。以上BMW『R60/2型』のご紹介でした。
レストアに欠かせない再メッキできます
バイクマフラーの再メッキ実験的に受付開始
お問い合わせが多かった、バイクマフラーの再メッキですが、
ただいま、実験的にマフラー再メッキの加工の受付を開始しました。
消音機が入っているものでも対応可能。
~マフラーの再メッキをされたお客様の声~


お世話になります。先日依頼した再メッキした純正マフラーの取り付けが完了しました。30年前の純正マフラーの再メッキをして頂ける業者がいない中再メッキして頂き有難うございました。出来あがりも申し分ない仕上がりでとても満足しています。
又機会がありましたらお願いします。 山口県 M様
CB400F

再メッキ後(車種・・・CB400F)

再メッキ前(車種・・・CB400F)
※マフラー&液パイにつきましては再メッキ後(再生品の為) ピンホールが原因(ガスが発生)で熱が加わった時点(エンジンをかけた)で膨れる可能性があります。
この場合は過去に何度も再再メッキしたことがありますが、同じ箇所が膨れました。よってメッキ不良ではなく、再メッキ品のためピンホールが原因だといことがわかっております。
ですので、御社にお渡しする時はもちろんメッキ膨れがない状態でお渡しいたしますが、その後膨れは一切ノークレームになります。
ウルフ125t
ウルフ125tマフラーを再メッキいたしました
再メッキ後
再メッキ前
カワサキ750RS(Z2)
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再メッキ前 | 再メッキ後 |
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板金前の凹み | 板金後→再メッキ |
BMWの『R60/2型』のメッキ手入れ
クロムメッキパーツの多いBMWの『R60/2型』の手入れにおすすめケミカル「メッキング&サビトリキング」についてご紹介させて頂きます。
クロムメッキには最大の弱点が!?
クロムメッキには目にみえない無数のミクロン単位の穴があいており、そこから水や埃がはいり、クロムメッキが錆びるよりも前に、下地のメッキが錆びてきてしまいます。
ウオータースポットの発生→点錆び→メッキがめくれてしまいます。
初期の段階で、この穴を埋める事を強くお勧めいたします。
穴を埋める事で、クロムメッキの耐食性が飛躍的に上がます。
クロムメッキ保護剤「メッキング」
クロムメッキ錆落とし剤「サビトリキング」
メッキ加工の事ならNAKARAI
メッキング&サビトリキングを購入する
クロムメッキの事についてもっと知りたい方は、
詳しくはこちら:クロムメッキの全てが解る。