九州は大分県湯布院。インターチェンジから5分足らずで道沿いに見えるのは佇む趣のある洋館。敷地内には大きなSL車両が鎮座し、圧倒的な存在感を示す『岩下コレクション』。
ここには大正昭和を中心に歴史ある価値の高い骨董品や、それこそ当時の日用品や業務用美品などの品々が展示してある博物館です。この岩下コレクションの大きな魅力のひとつは数え切れないほどのレアな名車が展示されている点です。
驚くのはバイクの種類の多さだけではなく、この博物館が個人で経営していると言う事です。そんな常人には到底出来ない事をやってのけた岩下コレクションのオーナーはもちろん無類のバイク好きで、ここに訪れるライダー達を快く迎え入れ記念に写真を撮り館内のアルバムに思い出として残してくれています。
そんな豊富な展示バイクの数と、バイクへの愛情をたっぷり感じられるこの場所はいつしかライダーたちにとって聖地となり、九州内外からここを目指してくるライダーも多いとか。
そんな岩下コレクションを一躍有名にしたのはある1台のバイクです。そのバイクとは『ドゥカティ アポロ』。既にこのアポロの希少性については知る人ぞ知るものですが、このアポロは世界にたった1台しか無い幻のバイクです。
目次
九州のとある博物館にひっそりと眠る伝説のバイク『アポロ』
数ある展示バイクの中でもこのアポロだけはエキスパンドメタルで厳重に囲われております。過去の熊本地震ではやはりこの地域にも強い揺れが有り、展示バイクへの被害があったそうでアポロもケージ外へ倒れ込みました。しかし幸いにもエキスパンドメタルにもたれ掛かる形で倒れ、完全な転倒はせず大きな損傷は有りませんでした。
アポロはドゥカティが1963年に開発を開始した大型クルーザーバイクです。それまでの軽快なスポーツバイクから一転したその外観は『ドゥカティらしく無い』と言える巨大で重厚感のある車体が特徴的です。
幻となった由縁はその重すぎる車体重量とパワーに有ります。乾燥重量273kgという重量と強すぎるエンジンパワーに耐えうるタイヤが当時存在しておらず、その他にもコスト面では現実的では無いとしてあえなく開発を中止。プロトタイプ2台が作られたのみで、日の目を見る事が有りませんでした。その2台のプロトタイプの中の1台のみしか現存しておらず、まさに世界に1台の幻のバイクとなったのです。
現代の価値は時価にしてなんと2億円。東京の一等地で豪邸が2軒建つほどの価値です。
なぜそんなバイクが本場イタリアでは無く、日本のしかも九州の田舎にあるのか?同博物館オーナーがアメリカのとあるバイクショップでたまたま見つけたのが、このアポロだったそうです。もちろん当時としても希少価値の高いバイクで、高額であった為に自身の持つ工場の設備を売り払ってお金を工面し購入したそうです。
オーナーの情熱と愛情が注ぎ込まれたアポロは晴れて岩下コレクションへ向かい入れられ、ひっそりとここで余生を送る事となったのです。
世界で最も希少価値の高いアポロの全景をじっくり見ていきます。
シルバーとブラックの塗装が印象的なアポロ。フロントフォークカバーによってより重厚感のあるシルエットとなっています。
極太タイヤを包み込むフロントフェンダーの造形も美しく、ステーに金属部分は無骨な印象を受けます。各メッキパーツも当時ものとは思えないほど輝きを放っています。
本来アポロの保護目的では有りますが、エキスパンドメタル越しに見るとよりカッコよく見えますね。
迫力のL型4気筒エンジン
搭載エンジンは1257ccのL型4気筒4ストローク2バルブOHVエンジン。ボアストロークは84.5×56mmの高回転型ショートストロークで最高出力は100ps/7000rpmと当時としてはモンスター級の馬力を誇っていました。L型特有のエンジンレイアウトでしかも4気筒ですから迫力は相当のものです。
この怪物エンジンを手掛けたのは鬼才と呼ばれたエンジニア、ファビオ・タリオーニ。イタリアのバイク事業の骨子を作り上げた天才として今もなお語り継がれている存在です。
キャブレター。かなり特徴的な形状をしています。マニホールドの様な部分は蛇腹形状をしており、複雑なエンジンレイアウトを考慮したものでしょうか。
曲線の美しいシリンダーヘッドカバー。キャブレターの存在感もなかなかのものです。ちなみに最高速度は190km/hだそうです。
キックアーム付近には恐らく手彫りで『DUCATI BERLINER 1260cc』の文字が。摩耗どころか、文字内のインクまで残っていると言う驚異の保存状態です。
別アングルから。キックペダルは折り畳み式。ライトアップが美しい造形をより強調します。
更に別アングル。エアーインテークの様なものが見えますが、どの様な役割を果たしているのでしょうか。
エキパイも景色を反射させるほどに磨かれています。
驚異的な保存状態で、エンジンは錆もくすみも目立たないとても美しいコンディションを保っています。愛情を注いでメンテナンスがされているのが一目で伺えます。
美しい外装
シルバーとブラックが印象的な美しい塗装。更に境目にはゴールドのラインも入っています。タンク容量は不明ですが、ロングツーリングを想定してかかなり巨大です。中央にはドゥカティの旧エンブレム。こちらもオリジナルがそのままの状態の様です。
メーターが埋め込まれたヘッドライトケース。リム部分のメッキパーツが鋭く光っています。それにしても美しいシルバー塗装で、思わず見惚れてしまいます。
Mercury製のホーンが二つ。Made In Italyと書かれていることからやはりこれも当時ものでしょう。
ミドルポジションのコンチネンタルハンドル。ゆったりしたライディングが出来そうなちょうど良い高さです。
ブレーキレバー。細いレバーがまたクラシックバイクらしくて唆られます。ワイヤーカバーもしっかりと残っています。
シートは気品さが漂うホワイトレザーが採用。流石に革の劣化は顕著に現れていますが、年式を考慮するとやはり美しい状態が維持されており、艶やかです。等間隔に打たれた
スタッズもまた高貴な印象を受けます。
シートのエンド部分には大きなモールが。開発に当たってアメリカのハーレーダビッドソンを相当観察した様で、怪物的スペックもさることながら、外装においても参考としている部分が多い様です。
問題のタイヤです。16インチのホワイトレター仕様となっています。アポロのスペックに耐えうるタイヤが無いとして泣く泣く開発が中止されたとされていますが、時代が違えばそれこそ市販化も実現出来たことでしょう。しかし時代に愛されなかったからこそアポロは幻となり、ここまで神格化されたとも言えます。
フルカバータイプのリアサスペンションもまた美しいメッキ加工で光を放っています。
マフラーは葉巻型のストレートタイプサイレンサーが装着されています。果たしてどの様なサウンドを奏でてくれるのでしょうか。往年のL型エンジン特有の荒々しいサウンドか、もしくは上品でマイルドなサウンドか・・・
車体前方部分です。タンクしたのメッシュ部分は一体なんなのか。エンジン後方への冷却効果を向上させる為でしょうか。見れば見るほど所々に謎が残るアポロ。ここまで引き込まれて考察が止まないのは、もうすでに虜になっている証拠ですね。
フレームの太さで、アポロがどれだけ強烈なパワーと重量を誇っているかが伝わってきますね。
後方からの一枚。三角旗を模したようなデザインに『APOLLO』の文字が眩しいサイドカバー。このサイドカバーだけでも数百万の価値が有りそうですね。まさに世界遺産レベル。
アポロは間違いなくここで『生きている』
堅牢なケージに厳重に囲われ、走行する事はなくひっそりと佇んではいるものの、あくまで『生きながら眠っている状態』と言えます。この外装コンディションを見る限りではかなり手入れが行き届いており、アポロは間違いなく生きていていつでも走り出す。そんな印象さえ受け、耳を澄ませばその寝息が聞こえてきそうくらい生気を感じます。
世界に1台だけの幻のバイク『アポロ』は今でも、ここ岩下コレクションでその余生をたくさんの仲間(バイク)たちと共に送りながら、訪れるライダーたちに祝福を与え続けている事でしょう。
以上ドカティ『アポロ』のご紹介でした。
愛車はどのKING?
メッキ手入れ
クロムメッキパーツの多いバイクメッキの手入れにおすすめケミカル「メッキング&サビトリキング」についてご紹介させて頂きます。
クロムメッキには最大の弱点が!?
クロムメッキには目にみえない無数のミクロン単位の穴があいており、そこから水や埃がはいり、クロムメッキが錆びるよりも前に、下地のメッキが錆びてきてしまいます。
ウオータースポットの発生→点錆び→メッキがめくれてしまいます。
初期の段階で、この穴を埋める事を強くお勧めいたします。
穴を埋める事で、クロムメッキの耐食性が飛躍的に上がます。
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